第2話
最初は自分たちに何ができるのかも
わかりませんでした。
(※と=とおるさん/旦那様 ゆ=ゆみさん/奥様 ス=スタッフ)
ス お二人は工房にいらしたとき指輪のテーマは決
まっていましたよね。
と 指輪を作るっていうのは初めてでしたから、自
分たちに何ができるのかもわかりませんでした。
だから、明確にコレがしたいっていうのはなか
ったんですけど、工房に来る前に、僕らのテー
マってなんだろうねって、ふたりで考えました。
それで、僕ら二人とも、雪国育ちなので“雪”が
思い浮びました。
ゆ 私の育った町は、とっても雪深い所で冬は家の
2階まで雪が積もるようなところです。
と 今は二人とも東京で生活していますけど、変わ
らずずっと生まれ育った町が大好きで。
ス 雪の結晶の写真を持って来ましたよね?
と はい。雪から、雪の結晶と連想して、雪の結晶
をモチーフにしたいねって話をしていました。
ゆ それで、工房に来る前に、この雪の結晶いいな
っていうのをネットで拾って、プリントアウト
して持ってきました。
ス 「雪の結晶を使って指輪を作ってみたいです」
っておっしゃっていましたよね。
と 指輪を手作りするのは初めてのことだったので
どんなことができるのかもわからなくて、すご
ーく漠然としていて。
ゆ “雪の結晶”っていうテーマだけを持って工房を
訪れました。
と とくに突き詰めて考えてはいなかったというか、
手作りで実際にどんなことができるのかってい
うのがわからなかったので、指輪の内側に雪の
結晶を彫って、表側はとくになにもしないって
いうシンプルなのでいいかなあって思っていま
した。
ゆ それで、工房に来て、スタッフの方たちに、
「雪の結晶をモチーフにしたいなと思っていま
す」と伝えたら、
「雪の結晶っていうのは、どこから出てきた発
想なんですか?」と聞かれて、
私たちが雪国育ちだということや、トオル君は
スノーボードが好きで、私はスキーが好きなの
で、雪なんですっていう話をしました。
ス そうでしたね。
お二人は雪国のご出身で、故郷を大事にされて
るんだなあと思いました。
スキーとスノーボードも大好きだってお話もし
ましたね。
と そうやってスタッフの方たちと二人にまつわる
話をいろいろしているなかで、二人の誕生日が
それぞれ“25日”だっていうことも話に出てきた
んです。
ゆ そうそう。
と それじゃあ “25” っていう数字をキーワードに
したらおもしろいんじゃないかってなって。
ゆ それで、“25” っていう数字をそのまま指輪の
内側に刻印するのだとおもしろくないから、
指輪の表面を雪山に見立てて、私たちが好きな
スキーとスノーボードでシュプールを描こうっ
てなったんです。
スキーとスノーボードで “25” を描こうって。
ス そのあとで、 “25” で描くシュプールも、それ
ぞれの指輪に入れるんじゃなくて、“2”と“5”を
別々に入れたらどうだろうってアイディアも出
ましたよね。
ゆ はい、そうでした。
私がスキーをするので、トオル君の指輪には2本
線で “5” を入れて、トオル君はスノーボードを
するので、私の指輪に1本線で“2” を入れること
にしたんですよね。
と “2” と “5” をイメージしたゆるやかなラインを
それぞれの指輪に入れることにしました。
ス そのゆるやかなラインの入れ方についても、
どんなラインにしようか、いろいろ話しました
よね。紙に書いたりして。
と そうでしたよね。
それと、僕とユミの2つの指輪が重なったとき
に何かを表現できないかな?ってアドバイスを
いただいて。
ゆ “2” と “5” を紙に書き出して、数字を反転させ
てみたり、いろいろ書いたりして。
そうしたら、“2”と“5”の組合わせがハートに見
えるねってなったんだよね。
と そうそう。
2つの指輪を重ねて、“2”と“5” のラインが合わ
さったときに、二人のシュプールでハートを描
こう、ってことになりました。
ス そうでしたよね。
二人がそれぞれに雪山を滑ってきて、重なった
ときにハートで結ばれるっていうイメージがで
きましたよね。
ゆ 雪から、雪の結晶をモチーフにしたいなって考
えて。
そこに二人の好きなスキーとスノボー、それと
二人にまつわる数字“25”がハートを描くんです
よね。
スタッフのみなさんとここで色々お話しなかっ
たらこういうアイディアは浮かんでこなかった
だろうなと思います。
ス この後、ラインのイメージをご主人が描きまし
たよね。
と はい。
表面のデザインが固まって、彫る作業に移った
んですけど、シュプールのラインを彫るのは彼
女に任せました。
僕はもう細かい作業が苦手なので(笑)
ラインのイメージは僕が書いて、彫るのはバト
ンタッチみたいな。
ゆ そうだったね(笑)
実際に指輪にラインを入れるのも、どうやって
入れるか、すごーく考えたよね?
と あーそうだったね、すごい考えた。
ス 指輪のどこからどこまでにラインを入れるかっ
ていうのを細かく考えましたよね。
指輪をはめたときに、ラインが半分まで見える
ようにするのか、全部見えるようにするのかっ
ていうことを細かく考えましたね。
ゆ 考えましたねえ。
紙に描いて、指に巻いてシミュレーションした
んですよね。
リングを重ねた時に、ラインがどの位置で重な
ればハートに見えるのかとか、一本の状態でも
ラインが “2” と “5” に見えるようにするには、
どんなカーブをつけるかとか考えましたね。
と 僕とユミの指輪のサイズが結構ちがうので、
二人の指輪が重なったときにどうなるのかって
いうのはとくに細かく決めましたよね。
ゆ やったねえ。
スタッフの方たちといろいろ試行錯誤して、
ああでもない、こうでもないってやりながら作
っていきました。
ス こうやって指輪の表面のデザインは完成して、
次は内側のデザインをしましたよね。
と はい。表のデザインはそれで決まって、雪の結
晶は、指輪の裏側に刻印することにしたんです
よね。
ゆ 雪の結晶はどんなのにしようか?っていろいろ
みんなで話をしました。
それで、指輪の裏側にレーザー刻印でオリジナ
ルのものを作れるとアドバイスをいただいたの
で、トオル君がその雪の結晶をデザインするこ
とになってね?
と コレは宿題にして、家に持ち帰りました。